基礎屋的遠州弁講座
Vol.1 文法と使用法@


ここでは遠州弁(浜松弁)でもっとも重要な文法

・だら、ら、だに、に の用法
・け の用法
・助詞抜かしの法則
・”し”から”い”の法則
・否定助動詞の用法

を紹介いたします。

<だら、らの用法>

 だら、ら ・・・標準語訳 〜でしょう 〜でしょう?  
         
   ”だら” も ”ら” も大体同じ意味です。

 だら、ら は基本的に用言と体言の後ろに付けて使用します。但し体言には”ら”単独使用できません。これを忘れるとインチキ遠州弁になってしまうので要注意!ここでは用言と体言のそれぞれの場合にわけ、例を挙げて説明します。また、別に単独で”だら?”と言う使い方をするときがありますが、標準語の”でしょう?”と同じです
 <用言>

動詞
 ・行く ・・・行くだら  標準語訳 行くでしょう
     ・・・行く

形容詞
 ・白い ・・・白いだら  標準語訳 白いでしょう
     ・・・白い

形容動詞
 ・元気だ ・・・元気だら 標準語訳 元気でしょう
 *注意
  形容動詞は”だ”で言い切るため、だを省略して
  ”ら”をつける。”元気だだら”にはならない。

 <体言>

名詞
 ・車 ・・・車だら 標準語訳 車でしょう
 *注意
 体言には絶対”ら”単独では使用しない。
 ”車ら”になると”車たち”という意味になってしまう。

 
−例題−
 下線部の標準語を遠州弁に直しなさい。

 A:今度の旅行は、車で行く?それとも電車?
 B:やっぱり車でしょう。

 正解
 A:こんだの旅行は、車け?電車け?
 B:やっぱ車だら
 


<だに、にの用法>

 だに ・・・標準語訳 〜です 〜しなさい 〜せっかくしたのに
  に ・・・標準語訳 〜なっちゃうよ 〜しちゃうよ 〜だ などなど  

 だに、に も基本的に用言と体言の後ろに付けて使用します。”だに”と”に”は意味が違いますが、発音が似ているため初心者は間違えて使ってしまう場合があります。それではやっぱりインチキ遠州弁になってしまいますので混同しないこと。また、”だに””に”にはたくさんの意味やニュアンスがあるので特にに注意して覚える(慣れる)こと。
<だに>
用言、体言の後ろに付ける。ただし形容動詞は”だ”で言い切るため、だを省略して”に”をつける。”元気だだに”にはならない。だらのときと同じ。

<用言>
動詞に付ける場合は命令、してあげるのにという2つの意味で多く用いられる。命令は母親が特に多く使う傾向が見られる。形容詞の場合は間違いの指摘と説明の2つの意味が多い。形容動詞でも同じである。しかし指摘と説明はニュアンスで違うだけで文法上は同じかもしれない・・。
<体言>
名詞も形容詞と同じように間違いを指摘、説明するニュアンスを持つ場合が多い。
品詞 単語 遠州弁 標準語訳、ニュアンス 使用例
用言 動詞 行く 行くだに 行きなさいよ(命令) ちゃんと学校行くだに!(母親風)
行ってあげるのに 言ってくれれば、俺が行くだに。
(否定) 行かないだに 行かないんだよ みんな行かないだに・・
形容詞 白い 白いだに 白いんだよ
(説明、間違い指摘))
そこは白いだに!
(赤で塗っている友人に一言)
形容動詞 元気だ 元気だに 元気だよ(説明) あいつ元気だに。
体言 名詞 車だに 車だよ
(説明、間違い指摘)
明日、電車じゃないに、車だに!
白だに 白だよ
(説明、間違い指摘)
そこは白だに!
(赤で塗っている友人に一言)


<に>
用言(形容動詞抜かす)の後ろに付ける。形容動詞、体言の後ろには付けられない。だら、らと同じように考える(だらは用言体言、らは用言のみ)。ら同様、体言の後ろに使うと、”車に”と助詞の”に”みたいになってしまうので注意。
意味は単純に〜だよ、〜だぞといった感じだが、独特の暖かさが感じられる。「もう行くに!」と「もう行くよ!」だと前者の方がやさしさを感じるのは単に筆者基礎屋塾長が浜松人だからかもしれない。
品詞 単語 遠州弁 標準語訳、ニュアンス 使用例
用言 動詞 行く 行くに 行くよ、行っちゃうよ(誘い) もう行くに!(友達に待たされてる風)
(否定) 行かんに 行かないよ そんなとこ俺は、行かんに
形容詞 白い 白いに 白いよ
(説明、間違い指摘)
おけつ、白いに。
(石灰の上座ったとき)


<けの用法>

 け ・・・標準語訳 〜なの?(疑問) 〜するぜ(お誘い)

 けも基本的に用言と体言の後ろに付けて使用しますけは用言、体言両方に付けることができます。使い方も簡単です。ただ、聞かれているのに誘われていると勘違いしないこと。

用言、体言の後ろに付ける。形容動詞には”だ”をとって”け”をつける。
品詞 単語 遠州弁 標準語訳、ニュアンス 使用例
用言 動詞 行く 行くけ 行こうか(誘い) そろそろ行くけ(友人宅玄関)
行く?(疑問) もう行くけ?
行くのけ 行っちゃうの?(疑問) もう行くのけ?
形容詞 白い 白いけ 白いの?(疑問) そんなとこ白いけ!
(白で塗っている友人に一言)
形容動詞 元気だ 元気け 元気かい?(疑問) あいつ元気け?
体言 名詞 車け 車かい?(疑問) 買ったの、この車け?
(新車納入時)
白け 白いの?(疑問) そんなとこ白け!
(白で塗っている友人に一言)

その他のよく使う け
そうけ、やるけ、まじけ、だめけ、他動詞名詞はすべて



<助詞抜かしの法則>
 
 遠州弁では 〜は、〜がといった助詞を省略また変更して使う場合が多い。

 これは基本的に2つの場合に分けて考えることができる。一つは一文字の単語が主語のとき、例えば蚊、歯、血、目などである。もう一つはその他すべての体言(名詞)である。
   一文字単語:その語を伸ばすか ん をつけて助詞を省く。
   その他名詞:語尾に ん を付けて助詞を省く。
           ん で終わる単語には使わない。

 <一文字単語>
単語 標準語 遠州弁 単語 標準語 遠州弁
胃が痛い 胃ー痛い 火がつく 火ーつく
絵を描く 絵ー描く 屁をこく 屁ーこく
尾が長い 尾ん長い 実がでた 実んでた
蚊がいた 蚊ーいた 目が光る 目ー(ん)光る
木を切る 木ー切る 藻がつく 藻ーつく
毛を切る 毛ー切る 矢が刺さる 矢ん(−)刺さる
酢が嫌い 酢ー嫌い 湯が熱い 湯ーちんちん
背が高い 背ーん高い 具が大きい 具ん大きい
血がでた 血ーでた 痔になった 痔んなった
手が痛い 手ー痛い 芽がでた 芽ーでた
戸を閉める 戸ーたつ 場が和む 場ん和む
歯が痛い 歯ー痛い

 <その他名詞>
単語 標準語 遠州弁 単語 標準語 遠州弁
頭が痛い 頭ん痛い 電池 電池が切れた 電池ん切れた
車の中 車ん中 おなか おなかが出る おなかん出る
靴が脱げる 靴ん脱げる 足の裏 足の裏が臭い 足の裏ん臭い
家の中 家ん中 しげる しげるの家 しげるん家(ち)

きりがないのでこの位で・・



<し→いの法則>
 
 
遠州弁では、動詞の”〜した、〜して”を”〜いた、〜いて”に変更する。
 ちなみに、”〜しちゃう”は、”〜いちゃう”となる。
 関連動詞
単語 標準語 遠州弁 単語 標準語 遠州弁
燃やす 燃やした 燃やいた 壊す 壊した 壊いた
(こわかいた)
燃やして 燃やいて 乾かす 乾かした 乾かいた
燃やしちゃう 燃やいちゃう 直す 直した 直いた
燃やしておく 燃やいとく <ハイレベル>
焦がす 焦がした 焦がいた おやす おやいた



<否定助動詞 おせん、いん、なし の用法>
 
 
can not の意味を持つ、おせん、いん、なしの用法。
 おせん:できないという意味に加え、終わらない、やり切れないという意味を含む。
      動詞の後ろにつけて使用
 いん :できない。標準語の”ない”と同義語。ただし、動詞の連用形活用語尾イ段のところ
     
 に付く。 標準:やない 遠州弁:やいん
 
なし  :標準語”ない”に接続助詞”で”(ず+に もOK)を加えたものに等しい。
      
<例文>標準語:朝ご飯を食べずに、出かけた。
            遠州弁:朝ご飯食べなし、出かけた。
<否定助動詞 例>
単語 標準語 遠州弁 単語 標準語 遠州弁
おせん 食べきれない 食べおせん いん やれない やりいん
読み終わらない 読みおせん 掘れない 掘りいん
やり切れない やりおせん なし 見ないで〜 見なし〜
飲みきれない 飲みおせん やらないで〜 やりなし〜
いん 食べられない くいいん 食べないで〜 食べなし〜



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